進水式今昔

皆様お元気ですか?東京ではこのところ毎朝零下となるような寒さが続いており、1/22に都内中心部で21㎝を記録した積雪も、まだ日陰では凍ったまま残っています。

思い起こせば4年前の冬季オリンピック開催の頃も二度にわたる大雪で、ホームセンターでは除雪用シャベルが売り切れていた記憶があります。

暦の上では立春も近いですが、各地では雪の予報が出ており冬空はまだまだ続くようです。ささやかな気分転換になれば幸いですが、ユニークな色彩の世界を下記リンクにてご紹介します。

 

川西 英(かわにし ひで)という木版画作家の『神戸百景』シリーズより、72.「進水式」です。『神戸百景』は1962年に刊行された画文集ですが、現在では復刻版も出版されています。

神戸市HPでは全画を現在の紀行写真付きで掲載しており、リンクはそのうちの71.から80.までのページです。

(リンク)http://www.city.kobe.lg.jp/information/public/online/hyakkei/works/works08.html

佐伯工場の皆様には、長年見慣れた光景ではないですか?

私は進水直後に一瞬現れる波形の描写が正確だと感じますが、もし見たままの記憶で描いたのであれば川西さんは非常にデッサンの早い方だったのではないかとも思います。

場所は当時の川崎重工業 神戸工場で、製作年月は1952.1.1~1953.2.20とのこと。約66年前の進水式のようです。進水している船は貨物船の様だということは分かりますが、どなたか詳しい方がいらっしゃれば、推測でも結構ですのでぜひご意見をお寄せください。

最近では実際の進水式を動画撮影して保存することも可能になりましたが、絵は式中の最も劇的な数秒間を捉えていて古びた印象を感じさせません。むしろ時間を超えて、造船業の長い歴史の中繰り返されてきた鮮やかな瞬間を、今も再生し続けているとも言えるでしょう。

当社はこの版画が製作された頃とほぼ同じ、風情あるスリップウェイ方式で現在も進水式を行う日本でも数少ない会社です。戦後の復興から高度経済成長期へと向かった1950年代とは違い、昨今では造船不況や設備の老朽化、人手不足もあってこの方法をいつまで続けていけるのかは分かりませんが、可能な限り船主様をはじめ関係者の方々や地元の皆様とともに、規模は小さいながらも見る方の「心をうごかす」進水式を続けてゆく所存です。